【ADHD】スマホを「外部脳」にする通知ハック術 〜「あとで」を「今」に変えるリマインダー活用術〜
「あれ、何しようとしたんだっけ……」
ついさっきまで頭の中にあったはずの鮮やかな計画が、スマホの通知ひとつ、あるいは視界をよぎったコップの汚れひとつで、霧のように消えてしまう。そんな経験、一度や二度じゃありませんよね。
正直に言わせてください。それは、あなたの努力が足りないからでも、意志が弱いからでもありません。
私たちの脳は、情報の処理が少しだけ人より「にぎやか」なだけ。机の上が常に書類で埋め尽くされているような状態なんです。だから、新しい情報が入ってくると、古い情報が押し出されてしまう。ただ、それだけのことです。
だったら、その不安定な「脳内の机」を整理しようとするのは、もう諦めませんか? その代わりに、ポケットの中にあるそのスマホをあなたの「外部脳」として文字通り体の一部にしてしまうんです。今日は、「人生の難易度を下げる」ための、ちょっとしたスマホ活用術をお話しします。
まずは「自分のキャラ設定」を確認することから
RPGを遊ぶとき、自分が魔法使いなのか戦士なのかを知らずに魔王の城へ向かう人はいません。現実もまったく同じです。
「なぜか上手くいかない」という漠然とした不安を、「自分はこういう特性があるから、この装備が似合うんだ」という確信に変える。これだけで、心の重荷はスッと軽くなります。
まずは、WHO(世界保健機関)の基準に基づいたセルフチェックで、あなたの現在地を確認してみませんか? 診断というより、「自分の取説(トリセツ)」の1ページ目を作るような、気軽な気持ちでいいんです。
「自分がダメなんだ」という呪いを解いて、「じゃあ、どう攻略してやろうか」というワクワクする作戦会議を始めましょう。3分もあれば終わります。まだの方は、まずここから覗いてみてください。
💡注意欠如・多動症(ADHD)セルフチェックを受けてみる
通知は「一度きり」だとなかったことにされる
ADHDの方にとって一度きりの通知音は、夏の蝉の鳴き声と同じ「環境音」です。鳴った瞬間に忘れてしまうなら、それは鳴っていないのと同じこと。
だから私は、通知を「3段階の波」で設定することをおすすめしています。
【第1波:心の準備(30分前)】 「そろそろ今の作業、切り上げる時間だよ」という優しい予告です。私たちは、一度集中すると止まれない「過集中」の才能があります。だからこそ、無理やり止めるのではなく、少しずつ意識を外に向ける時間が必要なんです。
【第2波:いざ出陣(定刻)】 ここで動ければ満点。でも、どうしても手が離せないとき、ありますよね。
【第3波:最後のツッコミ(15分後)】 これが一番の生命線です。「ねえ、さっきやるって決めたよね? 忘れてない?」と、背中を叩いてくれる存在。第2波で「あとちょっと……」と自分に甘えたところを、ここで現行犯逮捕するわけです。
ちなみに、スヌーズ機能は毒になります。何度も繰り返すと脳が「あ、これ無視していい音だ」と学習してしまうから。「第3波が来たら、意地でもスマホを置く」。これだけをルールにするのが、生活を壊さないコツです。
「場所」に記憶を預けてしまう魔法
「いつかやらなきゃ」は、私たちの辞書では「永遠にやらない」と同義です。でも、不思議なことに「その場所に行けば思い出す」という回路は、意外と強く残っていたりします。
最新のスマホに備わっている「位置情報リマインダー」は、まさに私たちのために開発された機能だと思っています。
「自宅の最寄り駅に着いたら、ゴミ袋を買うことを教えて」 「会社のデスクに座ったら、あの件についてメールすることを教えて」
脳に無理をさせて「覚えておけよ」と命令するのは、もうやめましょう。スマホが勝手に「ここだよ!」と教えてくれる快感。一度味わうと、もう元の生活には戻れません。
ホーム画面は「オシャレ」より「戦場」であれ
アプリを開いてタスクを確認する。……この「1タップ」が、私たちにはとてつもなく高い壁に見える日がありますよね。だったら、タップしなくても目に入るようにすればいい。
ホーム画面の一等地に、カレンダーやリマインダーをドカンと大きく表示させてください(ウィジェット機能ですね)。オシャレな壁紙なんて、二の次でいいんです。
ロックを解除した瞬間、今日の予定が目に飛び込んでくる。これくらい強引で、ようやく「普通の人」と同じ土俵に立てるんです。
ただ、人間は慣れる生き物。同じ画面が続くと、脳がそれを「景色」として無視し始めます。一週間に一度、ウィジェットの配置や色を変えて、脳に「おっ、何か変わったぞ?」と刺激を与え続ける。このちょっとした「ゆらぎ」が、継続の秘訣です。
カレンダーの中身は「他人の時間」だけに絞る
予定も、タスクも、買い物リストも。すべてをカレンダーに詰め込んで、画面が文字で真っ赤になっていませんか? それを見た瞬間、脳がフリーズしてスマホを閉じたくなる。その気持ち、痛いほど分かります。
解決策はシンプル。「動かせない予定」と「今日やること」の住み分けです。
・カレンダー: 会議や通院など、相手がいる「動かせない時間」だけ。 ・リマインダー: 資料作りや洗濯など、自分のタイミングでいい「タスク」。
そして、カレンダーには必ず「空白の1時間」をあちこちに散りばめておいてください。私たちは、時間の見積もりが天才的に甘い。30分で終わると思ったことは、1時間かかる。そう最初から諦めて「余白」を確保しておくことが、自分を嫌いにならないための防波堤になります。
攻略本は、何度書き換えてもいい
社会が求める「普通」という枠に自分を押し込もうとして、今までたくさん傷ついてきたかもしれません。でも、あなたは何も壊れていません。ただ、自分に合った道具の使い方を、誰も教えてくれなかっただけ。
意志の力には限界がありますが、仕組みの力は裏切りません。
今回お話しした設定も、試してみて「自分には合わないな」と思ったら、すぐに捨ててしまっていいんです。「また失敗した」と落ち込む必要はありません。「この装備は今の自分には重すぎた。次はもっと軽いものにしよう」と、あなただけの攻略本を書き換えていけばいい。
少しずつ、スマホを自分の手足のように馴染ませていく。その過程さえも、ゲームのように楽しめたら最高だと思いませんか?
あなたのその「デコボコ」した特性が、いつか唯一無二の武器に変わる。私は、本気でそう信じています。
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※本コラムは情報の提供を目的としており、医師の診断に代わるものではありません。日常生活に大きな支障を感じている場合は、医療機関への相談をお勧めします。